🕊️ 前回のお話:第34話「涙やけの小さな悩みと、ごはんの話」
朝の空気を変える“ある気配”に、オペラはすぐ気づく。
いつもより静かに僕の足元を歩きながら、
ちらっとこちらを見る。
「なにか始まる?」
「どこ行くの?」
そんな表情。
しっぽだけ、控えめに揺れている。
この感じを見た瞬間、
——今日、シャンプーしよう。
そう思った。
小さな体が震える、お風呂場の冒険
お風呂場に入ると、オペラは途端に静かになる。
暴れたり、逃げたりはしない。
ただ、小刻みに震えて、じっと僕を見上げてくる。
“パパ、何これ…?”
そんな声が聞こえてくるようだ。
シャワーを流しても驚かない。
お湯をかけても動かず、
まるで「受け入れること」を知っているみたいだった。
怖いのに、がんばっている。
その姿に胸がぎゅっとなる。
おとなしい子の、静かなシャンプー時間
オペラの毛は短いから、
濡れてもほとんど見た目が変わらない。
“洗われてる犬”というより
“濡れたオペラ”のまま。
それがまた可愛い。
声も出さず、暴れもせず、
ただ静かにシャンプーを受け入れてくれる。
良い子と言われる理由が、
こういうところにもあるんだろう。
唯一のドタバタ。ドライヤーは未知の世界
シャンプーよりも、
本番はこのあとだ。
ドライヤーのスイッチを入れた瞬間、
オペラはすっと僕の胸に体を預けてくる。
“パパ、助けて…”
逃げないけれど、
しっかりくっついてくる。
震えながら、小さな勇気をふりしぼっている感じがする。
そんな姿がもう、愛しくてたまらない。
10分ほどかけて乾かしていくと、
だんだん震えも止まり、
ふわっと、元の温かさが戻ってくる。
ふわっと戻る毛並みと、静かな余韻
ドライヤーが終わると、
オペラは自分で毛並みを整えはじめる。
少し遊んで、
少し動いて、
安心すると、すとんと眠る。
まだ、シャンプーは2回目か3回目。
すべてが初めてに近い経験だ。
その小さな背中を見ながら、
またひとつ、成長したんだなと感じる。
あとがき
犬のシャンプーは大変だと言われるけれど、 僕にとっては「大変」より 「いとしさ」のほうがずっと大きい。
震えながらも頑張る姿。
体を預けてくる瞬間。
乾いたあとの、ふわふわの寝顔。そんな一つひとつが、
暮らしの中の宝物みたいに感じる。きっと、来月も、半年後も、来年も、
僕はこの小さな子と一緒に、
少しずつ成長していくんだろう。

