🕊️ 前回のお話:第53話「茨の道を行く夜の、ぶり大根」
学校給食の記憶というのは、不思議なものだ。
ものすごく美味しかったわけでもないのに、なぜか忘れられない。
給食の記憶に残る、サバの竜田揚げ
サバの竜田揚げ。
アルミのお皿に盛られて、くし形に切られたレモンが添えられていた。
独特の匂いと、衣の食感。
あの頃は「ごちそう」とは思っていなかったけれど、記憶の奥にはちゃんと残っている。
きっかけは、鮮魚の見切り品
そんなことを思い出したきっかけは、妻がスーパーで買ってきてくれた鮮魚の見切り品だった。
ぶりのあら、サバ、真アジ。
どれも「早く使わないといけない」食材だ。
特別な日でも、気合を入れた料理でもない。
ただの日常の延長線上にある、いつもの台所。
まずは、ぶりのあらから
まず手をつけたのは、ぶりのあらだった。
そう、ぶりのあらで作るぶり大根。
日々の食卓は、こんなふうに静かに続いていく。
懐かしさで作る、サバの竜田揚げ
そして今回は、サバの竜田揚げ。
懐かしの給食・思い出バージョンだ。
下処理をして、下味をつけて、片栗粉をまぶす。
工程自体は難しくない。
けれど、臭みを取るひと手間や、水分を拭き取る作業は省かない。
音が教えてくれる、揚げ時
フライパンに多めの油を敷き、皮目から火を入れる。
揚げるというより、揚げ焼き。
油跳ねの音に少し身構えながら、じっと待つ。
しばらくすると、音が変わる瞬間が来る。
「パチパチ」から「パリパリ」へ。
あぁ、今だな。
理屈より先に、感覚が教えてくれる。
レモンの切り方は、ただの気遣い
盛り付けの前に、レモンを切る。
この切り方には、ちょっとだけこだわりがある。
どうすれば食べやすいか。
どうすれば最後まで邪魔にならないか。
料理というより、ただの気遣いかもしれない。
「下ごしらえ」が味を決める
出来上がったサバの竜田揚げは、思いのほか美味しかった。
給食の味を再現したかったわけじゃない。
今の自分なりの、ちょうどいい着地点だった。
使っている食材も、調味料も、すべて分かっている。
保存料もない。
その安心感が、味を少しだけ底上げしてくれる。
妻のひと言と、料理の本質
食べながら、妻がぽつりと言った。
「作った竜田揚げって、こんなにおいしいのね。
自宅で揚げ物はあまり作らないから…
酸化臭もないし、口当たりが軽い!」
僕は少し笑って、ボソッと答えた。
「魚の下ごしらえ、ちゃんとやってるからさwww」
すると妻が続ける。
「あー、私は魚の下ごしらえ、やらないからなぁ…。
こんなにも違うのか💦」
料理は、火入れの前に決まっている
料理は奥が深い。
火入れや味付け以前の段階が、とても重要なのだと思う。
昔の料理人の修行は「10年」と言われるほど長く、
数年間は包丁を握らせてもらえず、雑用から始まるのが当たり前だった。
今では修業期間の短縮が進み、
無駄だと言われることもある。
けれど、切り方、下準備、作る時の気持ち(出た、昭和の精神論www)。
そういうものは、やっぱり最終的な仕上がりに影響すると思っている。
酒のあてに、ちょうどいい一皿
今回のサバの竜田揚げは、
ごはんのおかずというより、
「酒のあて」にぴったりな一皿だった。
あとがき
懐かしさで作った料理が、
今の自分の感覚でちゃんと美味しくなる。
それだけで、少し嬉しい夜だった。

