🕊️ 前回のお話:第99話「教習所に申し込んだ日、少しだけ「やっちゃったな」と思った話」
はじめての教習、初日。
正直に言うと、しょっぱなからやってしまった。
教習に間に合うよう、十分すぎるほど余裕をもって家を出た。
時間だけを見れば、問題はなかった。
ただ、気持ちの余裕はまるでなかった。
不安。
できなかったらどうしよう、という恐れ。
今さらだけど、恥ずかしい思いをするんじゃないか、という弱気。
そんな感情に、出発した瞬間から支配されていた。
教習所に着いた瞬間
結果的に、教習所に到着したのは開始15分前。
数字だけ見れば「間に合っている」。
でも、心拍数はまったく間に合っていなかった。
受付に入った瞬間、
独特の空気を感じた。
少し冷たくて、
オイルとゴムと、どこか土っぽい匂い。
奥の方から、
エンジンの始動音。
アクセルを煽る音。
クラッチが繋がる「カチャン」という金属音。
その音の向こうに、
コースが“ちらり”と見えた。
——あ、ここだ。
一瞬でわかった。
ここは、見学する場所じゃない。
参加する場所だ。
受付での小さな混乱
ここで、完全に焦りが表に出た。
説明を受けていたはずの
教習簿と配車券。
どこにあるのか、
どう出すのか、
頭が真っ白でうまくできない。
結局、受付スタッフさんに助けてもらうことになった。
しかも、二輪教習のコースは別棟。
歩いて数分かかる。
時間がギリギリだったこともあり、
スタッフさんが一緒に来てくれることになった。
……どうだ、この有様。
自分でも情けなくなった。
もう戻れない場所
別棟に近づくにつれて、
音が大きくなる。
エンジン音が、
もう「背景」じゃなくなってくる。
コースが視界いっぱいに広がった瞬間、
はっきりと思った。
ああ、
もう戻れないな。
後悔、ではない。
逃げ道がなくなった、という感覚。
でも、不思議と嫌ではなかった。
教習が始まる
なんとか準備を済ませた。
・ロッカーの使い方
・教習簿を預ける
・点呼
・準備体操
・開始前の説明
一つひとつが、
「いよいよだぞ」と背中を押してくる。
一限目
最初に教わったのは、基本中の基本。
・バイクの起こし方
・バイクを押して歩く
・またがってエンジン始動
・発車と停車
想像していたより、
バイクは言うことを聞いてくれた。
二限目
少しだけ内容が増えた。
・エンジン始動
・発車と停車
・八の字走行(検定コース外)
・第一段階で使う周回コース走行
必死だったけど、
頭が真っ白になることはなかった。
終わってみて
教習が終わったとき、
最初に浮かんだ感情はこれだった。
——あれ?動かせるじゃん。
できているかどうかは別として、
「無理」ではなかった。
不安よりも、
安堵と、ほんの少しの自信。
次が、楽しみだ。
そう思えている自分に、少し驚いた。
あとがき
門をくぐった瞬間、
もう戻れないと思った。
でもそれは、
後悔ではなく、覚悟だったのかもしれない。
この日、
大型自動二輪教習は、
頭の中の話から、
身体の中の体験に変わった。
まだ、何も始まっていない。
でも、確実に一歩目は踏み出していた。
つづく…

