🕊️ 前回のお話:第44話「流れに乗って、ここにいる」
新居での生活は、
まだまだ整いきっていない。
家具の配置も仮のままだし、
動線も、どこかしっくりこない。
「これで完成」と言える状態には、
ほど遠い気がしている。
生活より先に決まったもの
そんな中で、
なぜか真っ先に決まったものがある。
オペラの居場所だ。
リビングから出ない理由
オペラは、
家の中でも、ほとんどリビングから出ようとしない。
リビングと玄関を仕切るドアが開いていても、
まるで見えない結界でもあるかのように、
その境界線を越えない。
こちらが呼んでも、
一歩手前で立ち止まり、
「そこから先は、そっちの世界でしょ?」
と言わんばかりの顔をしている。
決まってしまった定位置
リビングの中でも、
定位置ははっきりしている。
ソファーと、丸テーブルの下。
大人がゆったり座れる二人掛けのソファーだけれど、
気づけば、その三分の一はオペラのものになった。
そこには、
オペラ専用の小さなラグが敷いてある。
誰が決めたわけでもない。
でも、
もうそこは「オペラの席」だ。
呼ばれるということ
時々、
その場所から、
オペラがこちらを呼ぶ。
視線と仕草で、
「こっちだよ」と伝えてくる。
こちらが気づかずに台所仕事をしていると、
わざわざ呼びに来ることもある。
勢いあまる日常
床とソファーの間には段差があるから、
ウレタン素材の小さな階段を置いている。
オペラは、
それを猛スピードで昇り降りする。
勢い余って、
ソファーの背もたれにぶつかったり、
階段そのものに激突したり。
見ているこちらは、
毎回ひやっとする。
親バカな想像と現実
調子に乗ると、
ソファーから一メートルほど先まで、
ジャンプするように飛び降りる。
骨折しないか、
捻挫しないか、
心配で仕方がない。
毎日そんな姿を見ていると、
つい、
「アジリティ、できるんじゃないか?」
なんて思ってしまう。
――親バカだ。
今はまだ、
散歩にも出られていないから、
その考えはいったん置いてある。
整えていく途中
環境整備も途中だし、
段差対策も、
ケージ周りも、
見直すところは多い。
しつけも同じだ。
興奮させないこと。
飛びついたら無視すること。
お座り、待て。
頭ではわかっている。
遊び相手として見られている
でも、
オペラから見た僕は、
どうやら「遊び相手」らしい。
だから、
どうしても興奮してしまう。
無視しなきゃいけない場面で、
つい反応してしまい、
結果的に助長している気もする。
このあたりは、
正直、
見直しが必要だと思っている。
もう少しだけ、このままで
来年からは、
「家は静かに過ごす場所」
そう教えながら、
散歩などでエネルギーを発散させていくつもりだ。
……もう少しだけ、
今はこのままで。
飼い主は、
どうしても自分に甘い。
中心が変わった暮らし
足腰への負担や、
ケガの防止に気をつけながら、
一緒に過ごしていきたい。
気づけば、
生活はすっかりオペラ中心になっていた。
夫婦の時間について
夫婦二人で出かけたいと思うことも、
もちろんある。
でも、
そんな機会は、
自然と減っていった。
クリスマスや、
年末年始のどこかで、
少しだけ、
妻との時間も作れたらいいな、
と思っている。
あとがき
生活基盤は、 まだ未完成だ。
それでも、
この家の中心は、
もう決まってしまった。整う前に、
居場所だけが、
先にできていた。

