🕊️ 前回のお話:第129話「坂道の先の田んぼ」
コーヒー牛乳の味を再現しようと思って、
作り始めた。
当時、四歳だった僕の思い出話。
大好きだったコーヒー牛乳
子どもの頃、
コーヒー牛乳が大好きだった。
瓶に入ったあの甘い飲み物。
お風呂上がりや外出の帰りに飲むと、
なんとも言えない幸せな気分になった。
子どもにとっては
ちょっとしたごちそうだった。
そしてある日、
ふと思った。
「これ、家でも作れるんじゃないか?」
四歳の小さな実験
当時の僕は、
まだ四歳くらいだったと思う。
台所には
一口のガスコンロがあった。
丸いノブをひねると
カチッと音がして火がつく。
もちろん、
父や母がそばで見守っていた。
今思うと、
四歳の子どもにコンロを触らせるなんて
なかなかのチャレンジャーだったと思う。
でも当時は
それが特別なことだとは思わなかった。
僕なりに考えた材料は
とてもシンプルだった。
- インスタントコーヒー
- 牛乳
- 砂糖
これを混ぜれば
コーヒー牛乳になるはずだ。
そう思っていた。
どうしても同じ味にならない
鍋に牛乳を入れ、
コーヒーを入れて、
砂糖を入れる。
ぐるぐるとかき混ぜる。
見た目は
それっぽい。
「できた!」
そう思って
一口飲んでみる。
……違う。
あのコーヒー牛乳の味には
ならない。
牛乳の量を変えてみる。
砂糖を増やしてみる。
コーヒーを薄くしてみる。
いろいろ試してみたが、
どうしても
あの味にはならなかった。
この挑戦は
一度や二度では終わらなかった。
何度も作っては
「違うなあ」と首をかしげていた。
覚えている外食の記憶
不思議なことに、
子どもの頃の外食の記憶は
かなりはっきり残っている。
カウンターの寿司屋では
「すまき」が好きだった。
寿司飯を
海苔で巻いただけのものだ。
好きなネタは
- たまご
- エビ
- 納豆巻き
そして、
行きつけのラーメン屋。
喫茶店「カトレア」。
こうした記憶は
なぜか鮮明に残っている。
思い出せない家のご飯
ところが
家で何を食べていたのかは
あまり思い出せない。
不思議なものだ。
毎日食べていたはずなのに、
記憶はほとんど残っていない。
きっとそれは
当たり前の日常だったから
なのだろう。
特別な出来事よりも
日常の風景は
案外記憶に残らないものなのかもしれない。
あとがき
結局、
コーヒー牛乳は
最後まで再現できなかった。
今になって考えると、
市販のコーヒー牛乳には
いろいろな材料が使われている。
四歳の僕が思いつく材料だけで
再現できるわけがなかったのだ。
それでも、
あの時の僕は真剣だった。
好きなものを
自分で作ろうとする。
うまくいかなくても
また試してみる。
今思うと、
あれは小さな研究だったのかもしれない。
もしかすると
あの頃の僕は、
小さな研究者
だったのだろう。

