🕊️ 前回のお話:第180話「バイクの納車日と装備の話」
今回はオペラのお散歩中に手からリードが離れてしまった話だ。
これは、妻とオペラが散歩に行ったときに起きた出来事だ。
その日は妻の帰宅が少し早く、
オペラを連れて散歩に出た。
お散歩が大好きなオペラ。
きっと、いつも以上に嬉しかったんだと思う。
事件は、
散歩の中盤で起きた。
糞の後始末をしていた、
ほんの一瞬の出来事だった。
次の瞬間——
オペラが、走り出した。
同時に、
妻の手からリードが離れた。
一目散。
迷いもなく、
全力で走る。
妻はすぐに追いかける。
「オペラ!!ストップ!!止まって!!」
叫ぶ。
でも、
届かない。
いや、届いていないのか、
それとも——
自由になった嬉しさで、
すべてがかき消されていたのかもしれない。
距離は、
みるみる離れていく。
追いつけない。
焦りが、
一気に恐怖に変わる。
そして——
見失った。
この時点で、
状況は一変する。
“散歩中のハプニング”ではなく、
「迷子」だ。
妻は、
必死に走った。
普段なら考えられないスピードで、
全力で。
息が上がる。
喉が焼けるように痛い。
それでも止まれない。
名前を呼び続ける。
「オペラ!!」
声がかすれる。
視界が狭くなる。
それでも探す。
すれ違う人に声をかける。
「小さい犬、見ませんでしたか?」
でも、
誰も見ていない。
不安が、
どんどん膨らんでいく。
車にひかれていないだろうか。
どこかに入り込んでしまっていないか。
誰かに連れて行かれていないか。
考えたくないことばかりが、
頭に浮かぶ。
その中で、
妻はSNSにも投稿していた。
「迷子になりました」
必死に拡散をお願いする。
走りながら、
探しながら、
呼びかけながら。
そのすべてを同時にやっていた。
このタイミングで、
僕に電話がかかってきた。
僕はちょうど退勤前で、
たまたま電話に出ることができた。
状況を聞いた瞬間、
頭の中が一瞬で切り替わる。
僕の中にも、
二つの感情があった。
「穏やかではいられない自分」
そして、
「オペラを信じている自分」
もしかしたら、
家に戻っているんじゃないか。
そんな可能性に、
わずかな希望を託す。
それでも、
現実は甘くない。
探しても見つからない時間が、
ただただ過ぎていく。
40分。
長すぎる。
妻は、
半ば諦めかけながら、
家に戻ることにした。
その帰り道。
家の前で、
何かが見えた。
丸まっている、小さな影。
近づく。
……オペラだった。
その瞬間、
張り詰めていたものが、
一気に崩れた。
妻は、
その場にしゃがみ込み、
オペラを抱きしめた。
そして、
そのまま地面に倒れ込んだ。
安堵と、
緊張と、
恐怖からの解放。
すべてが一気に押し寄せたんだと思う。
僕はそのあと、
仕事が残っていたけど、
定時で切り上げて帰宅することにした。
妻の様子が、
容易に想像できたからだ。
案の定、
帰宅すると妻はかなり落ち込んでいた。
「ごめんなさい」
そう何度も言っていた。
・もっとしっかり持っていれば
・私のせいだ
・私の責任だ
自分を責めているのが、
よくわかった。
でも、
妻の中ではそれだけじゃなかった。
「無事で良かった」で終わる話ではない。
むしろ、
「次はどうするか」
そこに意識が向いていた。
・ノーリードでも戻ってくるようにする
・リードを二重にする
・AirTagやGPSの導入
課題は明確だった。
一方のオペラ。
いつもと様子が違う。
元気がない。
あの食いしん坊が、
食事に反応しない。
これは、
さすがにおかしい。
・反省しているのか
・ただ疲れているのか
・それとも演技か
正直、
理由はわからない。
とりあえず、
食事を出してみる。
……食べるんかい。
しかも普通に。
思わず力が抜けた。
でも、たぶん——
それでいいんだと思う。
家族が揃って、
全員が無事で、
ちゃんと日常に戻ること。
それが一番大事だ。
今回の出来事は、
間違いなく反省すべきことだった。
でも同時に、
「失ってから気づく前に、気づけた」
そういう意味では、
大きな学びだったと思う。
これからは、
もっと慎重に。
そして、
もっと準備をしていこうと思う。

