🕊️ 前回のお話:第41話「膝の上の答え」
春になったら、オペラと一緒にアジリティの一日体験に行ってみようと思っている。
まだ冬の空気が残るこの時期に、少し先の春の話をするのは、なんだか気が早い気もするけれど、頭の片隅にふと浮かんで、消えずに残っている。
春の話を、まだ冬に考えている
最初はね、本格的な競技も視野に入るんじゃないか、そんなことを考えたりもした。
アジリティのトレーニング施設に電話をして、いろいろと話を聞いた。
「トレーニングは、とても地味ですよ」
「あなたが知っている競技とは、別物です」
そう言われたけれど、そんなことは最初からわかっているつもりだった。
人間だって、スポーツの舞台に立つ前には、同じ動作を何度も、何度も、地味に繰り返す時間がある。
派手な瞬間は、その先にしかない。
親バカと、観察のあいだ
オペラを見ていると、家の中でちょっとした段差を軽々と越えたり、狭いところをジグザグに走り抜けたりする。
――親バカだとは思う。
でも、「もしかしたら…」と思ってしまう瞬間があるのも、正直なところだ。
だから、春になったら一度だけ、体験会に参加してみようと思っている。
迷いの正体
ただ、そこにはひとつ、どうしても拭えない迷いがあった。
怪我のリスク。
それから、怪我をしなくても、無理が積み重なった先の“その後”。
競技ができる期間は、きっとそう長くはない。
生後3年あたりがピークだろう、なんて話も耳にする。
その先の余生を考えたとき、
「これは本当に、オペラのためなんだろうか?」
そんな問いが、胸の奥に残った。
やらせたい気持ちと、守りたい気持ち
親のエゴ、という言葉が浮かぶ。
やらせたい気持ちと、守りたい気持ち。
どちらも、オペラを想っているからこそ生まれる。
決断しきれない自分を、少し笑ってしまうこともある。
競技をやらない、という選択も、もしかしたら神様の采配なのかもしれない、なんて考えたりもして。
答えを急がないという選択
それでも、ひとつだけは決めている。
競技大会を目指すアジリティではなく、「コミュニケーションを深めるためのアジリティ」に挑戦する、ということ。
続けるかどうかは、体験してから決めればいい。
向き不向きもあるだろうし、オペラ自身がどう感じるかが、何より大事だ。
過度な期待は持たない。
ダメだったら、ダメでいい。
期待しすぎると、その分ショックも大きくなる。
それもまた、考え方のひとつだと思っている。
増えていく「やりたいこと」
オペラを迎えてから、やりたいことは本当に増えた。
家庭犬向けのドッグトレーナー。
犬の管理栄養士。
トリマー。
犬の介護士。
犬のセラピスト。
どれも「競技」のためじゃない。
オペラと、少しでも長く、穏やかに一緒に暮らすためのものばかりだ。
時間も、お金も、きっと足りない。
だから必要に応じて、ひとつずつ、無理のないペースで関わっていけたらいい。
オペラファーストという誤解
そんな話をしていると、妻に言われる。
「ほんと、オペラファーストだよね」
笑ってしまうけれど、否定する気はない。
オペラだけじゃない。
妻も、文鳥も、みんな同じように大切にしている。
ただ、今はオペラが、一番手のかかる存在なだけ。
それだけのことだ。
未来を急がない
春は、まだ少し先。
その頃、オペラがどんな表情で体験会に立つのか、それとも、思ったより興味を示さないのか。
答えは、急がなくていい。
未来の可能性よりも、今日、膝の上に感じる温もりを大切にしたい。
あとがき
こうして迷いながら、考えながら、 一緒に選んでいく時間そのものが、 もう十分、豊かなのだから。

