🕊️ 前回のお話:第116話「デカチワワ疑惑と、主の覚悟」
我が家のオペラに、膝蓋骨脱臼(パテラ)ではないだろうか――
そんな疑惑が、静かに持ち上がっている。
昨年末に一度。
そして今月も、もう一度。
今月よりも、年末のほうがやや重かった。
年末に、かかりつけの獣医師へ相談した。
膝蓋骨脱臼(パテラ)グレード1。
自然に戻る段階の可能性が高いですね。
そう告げられた。
今は経過観察。
そして、日常生活では――
「ジャンプをできるだけ減らすこと」
「興奮を長引かせないこと」
その二つを意識してください、と。
だからこそ。
帰宅の儀式を、変えてみることにした。
帰宅の儀式を変えてみた夜
低い声で「ただいま」。
目は合わせない。
ケージは開けない。
オペラは、いつも通りぴょんぴょん跳ねていた。
ライブ開演。
だが今日は、主が違う。
心を鬼にして、無反応。
数秒、跳ね続ける。
内心は揺れる。
「かわいいけど、今日は違う。」
思いがけない伏せのポーズ
跳ねる。
無視。
跳ねる。
無視。
しばらくして、オペラの動きが止まった。
一瞬の静止。
そして――
伏せ。
指示は出していない。
「伏せ」のコマンドは、まだ完成度が低い。
成功率も高くない。
それなのに、自分から伏せた。
静かに、こちらを見る。
その姿勢が、1分続いた。
1分。
たった60秒。
でも、長かった。
僕は扉を開けた。
落ち着きが、解放の合図になった瞬間だった。
あとがき
あとから考えた。
実は伏せたあと、数秒して目が合った。
どこか誇らしげだった。
「これで合ってる?」ではなく、
「これが正解でしょ?」という顔だった。
なぜ伏せたのだろう。
興奮しているときは、コマンドは入らない。
嬉しさが優先順位の最上位になる。
でも今回は違った。
跳ねても反応がない。
どうすればいいのか、考えたのだろう。
そして、自分で選んだ。
一番落ち着く姿勢を。
伏せは、教えたからじゃなかった。
自分で見つけた“正解”だった。
ちょっと切ない夜だった。
でも、それ以上に誇らしかった。
嬉しさを我慢させたのではない。
嬉しさの出し方を、一緒に探し始めただけだ。
長く、穏やかに、元気でいてほしい。
そのための、たった1分。
扉の前の沈黙は、
僕たちの関係を、ほんの少しだけ更新した。

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