春の匂いがわかる人

雨上がりの春の通学路を歩く少年 「日々とぬくもり」

🕊️ 前回のお話:第221話「思っていたのと違ったけれど」


小学校低学年の頃から、不思議と季節の変化に敏感だった。

特に覚えているのは、小学校2年生くらいの時のことだ。

午前中は雨。

帰る頃にはすっかり晴れていた。

黄色い安全帽をかぶり、黄色い傘を持ち、長靴を履いて下校していた。

子供の頃の記憶なんて曖昧なものだと思うのだが、その日のことはなぜか今でも覚えている。

水たまりの残る通学路。

雨上がりの空。

そして、ふわっと漂ってきた春の匂い。

土筆だったのか。

よもぎだったのか。

あるいは両方だったのか。

そこまでは覚えていない。

でも、

「春の匂いがする」

と思ったことだけは鮮明に覚えている。


当時の僕は、そういう話を普通に同級生へしていた。

「今日、春の匂いするよね」

みたいな感じだ。

ところが反応は微妙だった。

「そう?」

と言われることもあれば、

「何それ?」

みたいな顔をされることもあった。

僕としては当たり前に感じていたことだったので、

逆に驚いた。

え?

みんな分からないの?

そんな気持ちだった。


それから何十年も経った。

大人になっても季節の匂いは感じる。

春の匂い。

夏が近づく匂い。

雨が降る前の空気。

雨上がりの匂い。

秋の気配。

冬の乾いた空気。

言葉で説明するのは難しい。

でも確かにある。

少なくとも僕にはそう感じる。


ある時、その話をしたことがあった。

すると相手が、

「分かるよ」

と言った。

その瞬間、少しホッとした。

あぁ。

自分だけじゃなかったんだ。

そんな気持ちになった。


考えてみれば、

季節の匂いも、

天気の匂いも、

見えるわけではない。

数値で測れるわけでもない。

だから説明が難しい。

それでも同じ感覚を持っている人に出会うと嬉しい。

「いた!」

そんな感じだ。


最近はバイクに乗るようになったこともあって、空を見る機会が増えた。

と言いたいところだが、本当は昔から見ていたのかもしれない。

雲の形。

風の強さ。

空気の匂い。

雨が来そうな気配。

子供の頃から気になっていた。


虹も好きだ。

天使のはしごも好きだ。

空を見上げていると、つい立ち止まってしまう。

59歳になった今でも変わらない。


そういえば以前、バイク女子の動画を見ていた時のこと。

走行中に女性ライダーを見つけると、

「仲間だ!」

と思うらしい。

本当かどうかは知らない(笑)

でも僕が季節の匂いの話を理解してくれる人に出会った時の気持ちは、たぶんそれに近かったと思う。

「あっ、いた!」

そんな感じだった。


もしかしたら、

季節の匂いなんて気のせいなのかもしれない。

でも僕は今でも感じている。

そして同じように感じる人がいることも知っている。

だからたぶん気のせいではないのだろう。

さて。

今年の夏は、どんな匂いがするのだろうか。


📘 次のお話:第223話「秋まで待てる気がしない」


プロフィール
こんにちは、自由きままなライフログを書いている おぷっぷ です。

このブログは、今の僕の人生を言い表す言葉を置いておきます。

「山頂を目指す登山ではなく、森を歩く散策。」

目的地は決まっていない。

ただ、歩く。

風の音に耳を澄ませ、

鳥のさえずりに足を止め、

足元に咲く小さな花を見つける。

昨日は気づかなかった景色が、

今日はなぜか心に残る。

昔の足跡を見つけては、

「あの頃の自分は、ここを歩いていたんだな。」

と、静かに微笑む。

歩くたびに森の景色は少しずつ変わり、

歩くたびに自分も少しずつ変わっている。

だから、同じ道でも、

いつも新しい発見がある。

人生は、

山頂を目指して競い合うものではなく、

自分だけの森を歩きながら、
出会った景色を味わう旅なのかもしれない。

そして、このブログは――

人生という森を歩いて見つけた、小さな景色を残す備忘録。

未来の自分へ。

そして、いつか家族がこの森を歩く日が来たなら、

「あぁ、この人はこんな景色を見ながら生きていたんだ。」

そんなことが少しでも伝わったら、

それだけで十分。
ライフログ「日々とぬくもり」
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