🕊️ 前回のお話:第110話「教官は、やさしい兄貴だった」
教習時間も大詰め…
見極めを含めない、ラスト4時間の教習。
特別なことをしているわけではない。
総合コースを回り、各種目を確認する。
でも、どこか空気が違った。
教官の視線が、少しだけ厳しい。
そして自分の中にも、うっすらと“卒検”という言葉が浮かび始めていた。
どうやら僕の頭の中も、知らないうちに“卒検モード”に入っていたらしい。
普通車の後ろで繋がった感覚
信号待ちの普通自動車の後ろを、1速でゆっくり走る。
止まれない状況。
でも、フラつかない。
ニーグリップ。
後輪ブレーキ。
断続クラッチ。
あれ?
これ、一本橋と同じじゃないか?
一本橋は橋の上だけの話ではなかった。
公道の低速走行そのものだった。
周回を重ねると、他の課題も顔を出す。
S字はクランクの親戚。
進入角度と視線。
ブレーキの強弱。
スラロームのリズムは、カーブの脱出に活きる。
急制動は、再現性の確認。
波状路は公道にはない。
でも、くるぶしでバイクを支える感覚は確実に残っている。
バラバラだった課題が、一本の線になり始めていた。
僕の“卒検脳”
その頃、僕は二つの質問をした。
ひとつ目。
「速度指定区間、30kmきっちりで走らないとダメですか?」
ふたつ目。
「側道から本線に入るとき、この位置に車が居たならOKという目安はありますか?」
今思えば、なかなか“卒検寄り”の質問だ。
減点されないラインを探していたわけではない。
…と、言いたいところだが、
少なくとも“正解”を探していたのは間違いない。
教官の答えは、どちらも卒検の話ではなかった。
「31kmはどう考えますか?」
「実際の公道なら、どう判断しますか?」
あれ?
卒検の話、してないぞ。
教官は続けた。
「あなたは、もうすぐ大型自動二輪で公道を走るんですよ。
卒検のための正解なんてありません。
状況に応じて判断する力が必要です。」
その瞬間、気づいた。
あ、俺、卒検脳だ(笑)。
正解を探していたのは僕だった
- OKの位置。
- NGの位置。
- 30kmきっちり
でも公道に、そんな明確な線引きはない。
必要なのは、
- 法令順守
- 安全確認
- そして、状況判断
普通自動車を運転してきた経験もあるのに、
なぜか僕は“受験生”になっていた。
しょうもない質問だったなぁ、と笑ってしまった。
でも、気づけたことは大きい。
あとがき
整ったのは視点だった
- 一本橋
- S字
- クランク
- スラローム
- 急制動
- 波状路
それぞれの技術が繋がったのも事実。
でも、本当に整ったのは、視点だったのかもしれない。
卒検をどうやり過ごすか、ではなく、
公道でどう走るか。
その基準に、ようやく戻れた気がする。
技術が整ったというより、
視点が整った日だった。

