🕊️ 前回のお話:第114話「ナナハン世代の内なる会議」
卒検に合格しても、そのままでは公道は走れない。
免許センターで手続きを終え、現在の免許証に「大型自動二輪」が追加されて、初めて“制度上”乗れる人になる。
今日は、その日だ。
教習所でもなく、卒検でもない。
夢の最終工程は、少し味気ない行政手続きだった。
試験手数料とは?
申請書を受け取り、受付を済ませる。
視力検査、書類確認、
教室での説明と写真撮影。
どれも淡々と進んでいく。
卒検の緊張感とは対照的に、空気はとても静かだ。
休憩中に、先ほど支払いをしたレシートを見たとき、少しだけ首をかしげた。
「試験手数料(大型自動二輪・教卒)1,850円」
試験は受けていない。
学科も技能も免除だ。
なのに“試験手数料”。
思わず心の中でツッコミを入れる。
――これは、気持ちの試験か?
実際には、免許種別追加に伴う審査・登録処理の費用らしい。
表示と実態のズレ。
制度は合理的なのだろうが、名称は少し不親切だ。
さらに、運転免許証発行手数料2,350円。
合計4,200円。
ICチップの書き換え、券面印字の変更、新カード作成。
なるほど、物理的コストもある。
そう自分を納得させながら、キャッシュレス決済を終えた。
待合室で静かに待つ。
周囲では更新の人、別種免許の人、さまざまな手続きが進んでいる。
その中で、自分はただ“文字を追加する人”だ。
名前を呼ばれ、新しい免許証を受け取る。
そこに、小さく「大自二」とある。
たった3文字。
だが、その3文字のために、何十時間も走り、悩み、向き合ってきた。
夢は、こんなにも事務的に登録されるのか。
少し可笑しく、少し感慨深い。
あとがき
今日で、制度上は大型に乗れる人になった。
けれど、まだ大型には乗っていない。
乗れる資格と、乗りこなせる実力は、まったく別物だと分かっているからだ。
教習所を卒業し、免許センターで手続きを終えた。
ここまでが準備期間。
免許証の中身は更新された。
でも、自分の中身はこれから更新していくのだと思う。
4,200円は、夢を現実に登録するための費用だったのかもしれない。
今日は一区切り。
そして、本当の意味でのスタート地点に立った日だ。

