🕊️ 前回のお話:第9話「灯のある場所で」
朝のカーテン越しに、光がゆっくり差し込んでいた。
いつもと変わらないリビング。ぬるめのコーヒーが湯気を立てている。
それだけの朝なのに、少しだけ空気が違って感じた。
湯気の向こうで、オペラが丸くなって眠っている。
コーヒーを淹れる音
ケトルの湯が静かに鳴く。
豆を挽く音、粉に落ちる湯の音。
湯気が立ちのぼり、部屋の空気が少しだけ甘くなる。
その香りの向こうで、風がカーテンをゆらしていた。
風のゆらぎの中で
オペラは日なたで眠り、光の粒をまといながら小さく丸まっていた。
その耳が風の音にぴくりと反応する。
ただそれだけの仕草に、なぜだか胸が温かくなる。
“生きている”って、きっとこういうことなんだろう。
カップの温度
カップを両手で包み込み、ひと口すする。
まだ少し熱い。けれど、それが心地よい。
遠くで犬の鳴き声がして、どこかの家のドアが閉まる音がした。
風がまた部屋に入り、カーテンをやさしく揺らした。
あとがき
風が過ぎても、残るものがある。
目には見えなくても、確かにそこにある。
コーヒーの香りが静かに消えていく。
僕はそっと息を吐いた。
「たぶん、今日は、よい一日でいてほしい」

