🕊️ 前回のお話:第11話「風のあとで」
やわらかな光が差しこむ朝。
外の空気は少し冷たく、窓の外では季節の色がゆっくりと変わっていく。
それでも、部屋の中にはいつもの静かなぬくもりがある。
コーヒーの香り。オペラの寝息。
小さな灯が、今日も部屋の奥で揺れていた。
冬の光を集めて
午前の光はやわらかく、窓際の空気に触れている。
加湿器の湯気が静かに立ちのぼり、オレンジ色の灯りと混ざる。
その穏やかさに、季節のリズムを感じた。
(……また丸くなった)
小さく身体をたたみ、オペラが目を細める。
その仕草だけで、世界がほんの少し柔らかくなった。
ぬくもりという日常
ストーブの音。
コーヒー豆を挽く音。
日常の音が、静かに部屋を満たしていく。
散らかった雑誌。
けれど、その乱れたままの“気配”が、確かに生きている証だった。
「今日は外に出れない匂いがしない」
窓に手をついたオペラが、そう言っているように見えた。
記憶という灯
ノートを開き、ペンを走らせる。
昨日の出来事、心に触れたものを書いていく。
すぐには言葉にならない気持ち。
けれど、少し時間がたつと、ふいに形を持ちはじめる。
そのたびに、「あぁ、今日が続いていくんだ」と思う。
何気ない日々の中で、書きとめたい瞬間が今日もひとつ増えていく。
あとがき
少しの光で、体を温めるオペラ。
それは、何かを抱きしめることと似ている。冬の匂いが近づいてきて、
今日の世界は、少しゆっくりとめぐり、
やさしく包んでいく。

