🕊️ 前回のお話:第12話「ぬくもりの中で」
風がやみ、季節がひとつ、まためくれた。
外の空気は冷たく、窓の向こうは白い息を吐いているようだった。
それでも部屋の中は静かで、やわらかい熱が満ちていた。
新しい家の壁が、外気を吸い込んでは静けさに変えていく。
高気密高断熱の効果だ。
その言葉が、やっと実感をともなって胸に落ちる。
オペラが毛布の端っこをくわえて、自分の寝床を整えている。
その仕草を見ているだけで、心がほどけていく。
新しいぬくもり
窓辺のストーブが、低い音で囁いている。
コーヒーを淹れる香りが、部屋の中をゆっくり満たしていく。
新調したベッド。
ふかふかの羽毛布団に体を沈めた夜を思い出す。
あの瞬間、冬の訪れを少しだけ楽しみに思えた。
記念日の丸印
妻がカレンダーを見て、小さく笑った。
その日付には、控えめな丸印がついている。
言葉にはしなくても、互いにわかっている。
「もう、そんなに経ったんだね」
その沈黙が、何よりも穏やかな会話だった。
オペラがあくびをして、また丸くなる。
いつの間にか、時間の流れまで優しくなっていた。
日常という奇跡
書きかけのノートを開く。
昨日の文字が、まだ少し乾ききっていない。
「変わらないって、いいことだな」と思う。
繰り返す日々の中で、
見落としていたぬくもりが、少しずつ形になっていく。
あとがき
冬の冷たさが、ぬくもりを教えてくれる。
冬の冷たさが、ぬくもりを教えてくれる。
新しい家、新しい季節。
そして、変わらない心の灯。それだけで、今日も充分だと思えた。

