🕊️ 前回のお話:第156話「オペラ、もう暑いの?」
体調は戻ったはずなのに、何かが違う。
病と心と感情
あれだけしんどかった時間を抜けて、ようやく日常に戻ってきた。
咳も落ち着き、熱も下がり、仕事にも復帰した。
生活としては、確実に元に戻っている。
それなのに、どこか違和感が残っている。
うまく言葉にできないのだが、
“元に戻ったはずの自分”に、しっくりきていない感覚だ。
体調を崩しているときは、とにかく「元に戻りたい」と思っていた。
普通に呼吸ができること。
普通に眠れること。
普通に動けること。
それだけでいい、と。
でも実際に戻ってみると、
その“普通”が、どこか遠いもののように感じる。
あれだけ求めていたはずなのに、だ。
少し体調が戻り、心も穏やかになってきた今だから思うことがある。
体に不調をきたしているとき、自分の中にどこか攻撃的な感情があった。
初めて受診した病院なのだから、お互いに知らない者同士だ。
それなのに、
「なんでわかってくれないんだろう」
そんな気持ちがどこかにあった気がする。
初めから体にマッチした薬を処方できるはずもないのに。
穏やかになった今だから、そう思える。
もしかすると、自分では気づかないだけで、
日常の中でも同じような感情が漏れていたのではないか。
そう考えると、少し不安になる。
今回のことを教訓にしようと思う。
体調が優れないときでも、できるだけイライラしないこと。
それだけでも、きっと見えるものは変わるはずだ。
不思議なものだと思う。
体調が悪いときは、回復後の世界を理想的に想像する。
でも実際は、そこに戻ったとしても、
完全に同じ感覚ではいられない。
少しだけズレている。
ほんの少しだけ、世界の見え方が変わっている。
理由はわからない。
ただ、確実に言えるのは、
あの数日間の体験が、自分の中に何かを残しているということだ。
あとがき
もしかすると、これもまたすぐに元に戻るのかもしれない。
時間が経てば、何もなかったかのように、
元の感覚に戻っていくのだろう。
それでも今は、この微妙な違和感を、
そのまま感じておこうと思う。

