🕊️ 前回のお話:第165話「久しぶりの動物病院と、思いがけない発見の話」
あの頃の自分は、確かにそうだった。
あの時は、現実的に250ccあたりを考えていたと思う。
取り回しもいいし、維持費も抑えられる。
何より「初めてのバイク」としては無難な選択だ。
…頭では、理解していた。
バイクを選ぶという時間の話
だけど、その後の一ヶ月。
僕は完全に“迷子”になっていた。
バイク屋に足を運び、
中古サイトを開いては閉じ、
また別の車種を検索する。
- 250cc
- 400cc
- 600ccクラス
- リッターバイク
- ネイキッド
- SS(スーパースポーツ)
- ハーレー
どれも良い。
どれも乗ってみたい。
気がつけば、
「何を基準に選んでいるのか」がわからなくなっていた。
そんなある日、ふと頭の中で声がした。
「大型免許、なんで取ったんだっけ?」
一瞬、間が空いた。
そして、すぐに答えが返ってきた。
「ハヤブサに乗りたいからだろ」
ああ、そうだった。
あの時の自分は、
理屈じゃなくて、ただ“それ”に乗りたかったんだ。
諸先輩方の言うこともよくわかる。
「最初は250ccからにしな」
間違っていない。
むしろ正しい。
だけど、不思議なことに
その言葉にワクワクしない自分がいた。
画面の中で、
600ccクラスやリッターバイクを眺めている時の方が、
明らかに心が動いている。
「これ、乗ってみたいな」
そう思えるのは、
いつもそっち側だった。
現実を見れば、
いきなり大型は無謀かもしれない。
重さもあるし、パワーもある。
扱いきれるのか?という不安もある。
だけど同時に、
こうも思っていた。
「乗りたいものに乗らないで、後悔しないか?」
それからは、
GSX1300Rハヤブサを中心に探し始めた。
中古サイトを見て、
気になる個体を見つけては保存。
実際にバイク屋にも足を運んだ。
試乗はしていないが、
エンジンをかけてもらい、
跨ってみた。
その瞬間、
「あ、これだな」
と、感覚的に思ってしまった。
低く構えた車体。
圧倒的な存在感。
ただ跨っているだけなのに、
妙な説得力がある。
おっと、…危ない。
欲しくなるに決まっている。
だけど現実はシビアだ。
予算的に少し厳しい。
そしてもう一つの問題。
「これ、いつ乗るんだ?」
所有する満足感はある。
でも、
気軽にコンビニへ、というバイクではない気もする。
宝の持ち腐れになる可能性も、
正直感じていた。
さらに追い打ちをかけるように、
探しても探しても、
「これだ」
と思えるハヤブサに出会えない。
もちろん、
予算の制約もある。
理想と現実の間で、
少しずつズレていく感覚。
それでも、
不思議とこの時間は楽しかった。
悩んで、
迷って、
調べて、
また最初に戻る。
その繰り返し。
もしかすると、
バイクを“買う”というよりも、
バイクを“選んでいる時間”そのものを、
楽しんでいたのかもしれない。
そんな一ヶ月だった。

