🕊️ 前回のお話:第244話「「やりたいことがわからない」と聞いて、18歳の自分を思い出した。」
前回の記事で、高校3年生から18歳頃のことを書いた。
進路に迷い、
音響技術専門学校へ進学し、
半年後に退学。
そして美容師になることを決めた。
実は、あの頃のことを思い返していて、一つ気付いたことがある。
僕には人生を大きく動かしてくれた二人の恩人がいたということだ。
社会人になるきっかけをくれた人
高校3年生の夏。
僕は美容室のアルバイト面接を受けた。
美容師になるためではなく、職業体験のような気持ちだった。
その時、面接を担当してくださった方がこう言った。
「それなら美容室でアルバイトする時間がもったいない。」
「やりたいことがあるなら、そのことに全部のエネルギーを使った方がいい。」
当時の僕は知らなかった。
その方は、後に会社の専務だと知ることになる。
店の人手よりも、一人の高校生の人生を優先してくれた。
今思えば、本当にありがたい言葉だった。
半年後、もう一度あの美容室へ
音響技術専門学校へ進学したものの、半年で退学した。
「やっぱり美容師になろう。」
そう決めて、もう一度あの美容室の面接へ向かった。
すると、面接を担当してくださったのは、半年前と同じ方だった。
面接が終わると、
「今から社長に会いに行こうか。」
そう言われた。
18歳の僕は頭の中が真っ白だった。
「社長?」
「どこへ行くんだろう?」
車に乗りながら、
「どこか遠くへ連れて行かれるんじゃないか。」
「事務所って怖い人がいる場所なんじゃないか。」
そんなことばかり考えていた。
今思えば、かなりの小心者である(笑)。
ところが着いた場所を見て驚いた。
当時アルバイトをしていた喫茶店から歩いて数分。
しかも、小学生の頃から毎日通学路で見ていた美容室だった。
僕が最初に面接を受けた店舗は支店で、そこが本店だったのである。
「えっ、ここだったの?」
そんなことを思ったのを今でも覚えている。
社長が教えてくれた現実
社長は、夢だけを語る人ではなかった。
「美容師は華やかに見える。」
「でも現実は毛クズまみれになる仕事だ。」
「頭皮がきれいなお客様ばかりじゃない。」
「それでも続けられるか?」
夢ではなく、現実を教えてくれた。
僕は、
「美容師になります。」
そう答えた。
もちろん、不安はあった。
でも、それ以上に覚悟を決めた瞬間だった。
そして採用していただいた。
面接の最後には、
「明日から社員旅行なんだけど、一緒に行くか?」
と誘っていただいた。
当時の僕は遠慮して辞退した。
59歳になった今なら、迷わず参加している(笑)。
あの頃は、積極性よりも遠慮の方が勝っていた。
二人の役割は違っていた
これまで僕は、
「恩人」
という一言でまとめていた。
でも最近になって気付いた。
専務は、
社会人になるきっかけを作ってくれた人。
創業社長は、
社会人として育ててくれた人。
役割はまったく違う。
でも、どちらが欠けても今の僕はいない。
そんな気がしている。
59歳になって、ようやく伝えたいこと
創業社長は、もうこの世にはいない。
だから、お墓参りへ行くたびに感謝を伝えている。
「社長、ありがとうございました。」
「人間として育ててくださって、本当にありがとうございました。」
そう心の中で話しかける。
一方、専務とは長い間お会いしていない。
人生、どこで再会するか分からない。
もし、いつか偶然お会いできる日が来たら、一つだけ伝えたい。
「あの時、音響へ行けと送り出してくださって、ありがとうございました。」
「そして、戻ってきた僕を受け入れてくださって、ありがとうございました。」
あの日が、僕の社会人としてのスタートでした。
そう伝えられたら、長年心の中にあった宿題を一つ終えられる気がしている。
人生は、人との出会いでできている
人生を振り返ると、
「あの人がいたから今の自分がある。」
そう思える人が何人かいる。
その時は気付かなかった。
でも、何十年も経ってから分かることがある。
59歳になった今、改めて思う。
人生は、一人で歩いてきたようでいて、決して一人ではなかった。

