🕊️ 前回のお話:第104話「自信が砕ける瞬間」
一本橋で苦しんだあと、
次に待っていたのが8の字だった。
正直、曲がるほうが怖いと思っていた。
大型バイクを傾ける。
倒れたらどうする?
そんなイメージが先に立っていた。
でも――
選択肢が多い種目だった
8の字は断続クラッチ。
一本橋と同じようで、
少し違う。
自由度があった
- クラッチは完全に切ってもOK
- 半クラッチで進んでもOK
- 必要に応じて後ブレーキで微調整
- 縁石に乗り上げない速度なら問題なし
「え、そんなに自由でいいの?」と思った。
思わず教官に聞いた。
クラッチ、切ってもいいんですか?
すると、
「いいの、いいの!」
と笑いながら。
ただし、と念を押された。
切りっぱなしはダメ。
惰性走行になるからね。
切ったら繋ぐ、切ったら繋ぐのイメージ。
この説明が、妙にしっくりきた。
やってみると、怖くなかった
最初の一周。
目線を出口へ。
クラッチを切る。
繋ぐ。
軽く後ブレーキ。
あれ?
怖くない。
倒し込もうとしなくても、
バイクが自然に回る。
重さを無理に支えなくても、
バイクに預ければいい。
気づけば、
スムーズに2周、3周と回れていた。
教官の一言
回り終えたあと、教官が言った。
「いいですね。安定してますよ。」
一本橋では檄が飛んだ。
でも8の字では、
評価だった。
エンストも転倒もない。
その時、確信した。
この課題は大丈夫だ。
取り組んだ初日に、
なぜかそう思えた。
なぜ合っていたのか
8の字は、正解がひとつじゃない。
- 半クラでもいい。
- 切ってもいい。
- ブレーキで調整してもいい。
選択肢がある。
その中で、自分の感覚に合う方法を選べる。
一本橋は「数字」に縛られた。
8の字は「感覚」で回れた。
もしかすると、
僕は直線よりも曲線のほうが合っているのかもしれない。
あとがき
すべてが苦手なわけじゃなかった。
砕けた自信は、
全部なくなったわけではなかった。
得意もある。
苦手もある。
その両方を知りながら、
少しずつ前に進む。
8の字は、
そんな自分の特性を教えてくれた。

