🕊️ 前回のお話:第167話「運命的な出会いと、衝動的に契約してしまった話」
バイクを契約したことを、なかなか言い出せなかった夜の話を書いておこう。
大型バイクを契約した
契約した。
勢いとはいえ、契約した。
あれだけ迷って、悩んで、
それでも最後は「なんとかなる」で決めたバイク。
問題はここからだ。
——妻に、まだ言っていない。
帰宅した時、
「ただいま」といつも通りの声を出した。
当然、何事もなかったかのように会話もする。
夕飯を食べながら、
他愛もない話をしている自分がいる。
…いやいや。
内心はそれどころじゃない。
「いつ言う?」
頭の中では、そればかりがぐるぐるしている。
今か?
いや、今じゃない。
食事中は違う気がする。
じゃあ食後か?
いや、なんかタイミングが違う。
風呂の後?
いや、それも違う気がする…。
完全に、言い出すタイミングを失っていた。
何をそんなにビビっているのか。
自分でもよくわかっている。
怒られるとか、そういう話ではない。
ただ、
「事前に相談しなかったこと」
これが引っかかっているのだ。
わかっている。
完全にわかっている。
これは僕が悪い(笑)
でも、あの時は止まらなかった。
あの出会いは、止められなかった。
…と、自分に言い訳をしてみる。
それでも、言わないわけにはいかない。
このまま隠し通せるような話でもない。
どこかのタイミングで、
必ず言うことになる。
ならば、早い方がいい。
そう思いながらも、
なかなか踏み出せない。
そして、
数日が経った。
——遅くない?
自分でも思う。
遅いよな。
でも、ここまで来ると
逆にタイミングが難しい。
そんなある日の夜。
意を決した。
「ちょっといい?」
この一言が、やたら重い。
自分でも驚くくらい、
声が少しだけ低くなっていた。
妻は普通に「なに?」と返してくる。
その“普通”が、逆に怖い。
そして、言った。
「バイク、契約しちゃった」
……一瞬の間。
この「間」が、
やけに長く感じる。
そして返ってきた言葉は、
妻:「え、そうなんだ…どんなバイク?」
僕:「スピードトリプル1050ってバイク…だよ」
妻:「ふぅ~ん、知らない名前」
——あれ?
拍子抜けした。
もっと何か言われると思っていた。
詰められるとか、
ため息とか、
そういうのを勝手に想像していた自分がいた。
だけど、実際は違った。
少し笑いながら、こう続いた。
「そういうの好きだよね。機械とかになると、急にスイッチ入るじゃん。
目つき変わるし、時間も忘れて没頭するし…欲しいってなったら止まらないタイプだもんね」
図星すぎて、何も言い返せなかった。
「で、どこに置くの?車、売っちゃえば?まぁ…好きにすればいいんじゃない?」
さらっと言われたその一言に、
肩の力が一気に抜けた。
なんだろう、この感じ。
ホッとしたような、
少しだけ力が抜けたような。
そして同時に、
「もっと早く言えばよかった」
とも思った。
あとがき
結局のところ、
一番膨らんでいたのは、
現実じゃなくて、
自分の中の想像だったのかもしれない。
とはいえ、
次からはちゃんと事前に相談しよう。
…たぶん。
いや、できるだけ(笑)
そんなことを思った夜だった。

